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 意識を失うかと思うくらいの快楽にイルカはきつく瞼を閉じる。
「……あぁっ!」
 堪えきれない嬌声と共にイルカはようやく精液を吐き出すことに成功して身を震わせた。自らの意志など関係なく勝手に絞り込むように収縮する襞に煽られたのか、身の内に濡れた感触を感じてイルカはまた背筋を震わせる。
 ぴったりと背中に張り付く人の体温。快楽は深く、断続的に震えながらイルカははふはふと呼吸を繰り返す。目の前にようやく見えたシーツは汗と唾液でしとどに濡れそぼり、きつく握り締めたせいでくしゃくしゃに皺が寄っていた。
「あー、気持ちいー」
 背後から抱きしめられ、そうして耳元に降ってくる聞き慣れた男の声。快楽に掠れたその声が妙に色っぽく聞こえてイルカは思わず顔を赤らめた。
 上半身を布団に突っ伏したまま腰を高く上げた状態でイルカは男に抱きしめられている。イルカの内部にはまだ男のモノが深々と突き刺さったままだった。
「…カカシ、もう抜いて…」
 もうどのくらいこうしてカカシを咥えこんでいるのだろうか。カカシがイルカに押し入ってから一体どのくらい達かされたんだろうか。一度の情交は長く執拗で、そうしてもう何度も交わっている。身体は限界を訴えて悲鳴を上げていた。それなのに。
「ね、あと一回だけ」
 そう言ってカカシはイルカを抱きしめたまま身を起こした。重力に引かれるままに今よりもさらに奥までカカシが潜り込んでくる。
「ひっ……あぁっ…!」
 もう限界だと思ったそのさらに奥を突かれてイルカは首を仰け反らせた。
「イルカのなか、凄い気持ちいい…」
「…や、やだ、おっきくしないで…」
 体勢が変わった苦しさに思わず下半身に力が入る。きゅうきゅうと締め付けてくるイルカにカカシのモノは徐々に硬度を取り戻していた。
「ねぇ、もう一回いいでしょ?」
 後ろから耳の軟骨を噛みながらカカシは甘えたようにイルカに囁く。こり、と噛まれるだけで背中がしなるのを止められないままイルカはイヤイヤと首を振った。
「…っ!そ、そう言ってさっきから何回したと思ってるんだ!」
 抱きしめる手はゆるゆると汗と唾液と精液にまみれたイルカの肌をまさぐっている。喚いたイルカに面白そうに顔を歪めてカカシは肩口に噛み付いた。
「それって始めてから何回達ったかってこと?それとも挿れたまま何回ヤったかったこと?」
 からかうようなその言葉にイルカは顔を赤らめる。本当に何回したんだろう。口で、手で達かされて、それから挿れられて。それから。
 身体をまさぐっていたカカシの指が、まだ硬さを保ったままの乳首を摘み上げた。思考が一瞬にして霧散する。
「…あっ…んんっ……!」
 ぷくりと立ち上がったままの乳首をきつく摘まれ捏ねられれば、自然とカカシを咥え込んでいるそこが締め付けるように収縮する。締め付けにだんだんと力を取り戻していくカカシにイルカはわずかの抵抗とばかりにイヤイヤと首を振った。
 割り広げられていくイルカの内部。みっしりとカカシに埋め尽くされ、イルカはひくりと喉を震わせた。
「気持ちいいの?」
 片手で乳首を弄ったまま、カカシは立ち上がり先走りの液を滴らせるイルカに手を伸ばす。握り込まれた瞬間、背筋が震えてひどくカカシを締め付けてしまう。
 締め付けにカカシが濡れた息を吐き出したのが分かった。あぁ、カカシも感じているのだ。そう思ったらもう駄目だった。どろりと思考は勝手に溶け出してしまう。
「……気持ち、イイ」
 熱い息を吐き出しながらイルカはついに諸手をあげて降参した。
「じゃあ、もう一回ね」
 楽しそうなカカシの声に殺意さえ覚えるけれどもう駄目だった。濡れそぼった性器を扱かれる度に、さらに深い快楽を求めて勝手に腰が揺らめく。
 結局逆らえない。こうなってしまうから、結局は逆らえないのだ。ゆさゆさとゆるく揺さぶられてイルカは身をじりじりと焦がす緩やかな快楽に身を捩った。
振り返ってほど近いところにあるカカシの唇に顔を寄せる。合わせるだけの口付けを受けながら、イルカは心の片隅で気を失うことすら出来ない無駄に体力のある自分をカカシと同じくらい呪っていたのだった。





 結局あれから三度もヤられた。空っぽになるまで貪り尽くされ、くたくたに疲れ果てて気を失うように眠りについたのだ。そうして今に至る。
 どのくらい眠っていたのかは知らないけれど、部屋の中は日光で溢れていた。セックスをいつから始めたのかさえ思い出せない。どのくらい情事に耽っていたのか。それからどのくらい眠っていたのか。唯一答えを知っていそうな人物は、隣に寝ているかと思いきやどこにも姿が見えなかった。
 病み上がりのくせにどういう体力をしているんだろうか、とイルカは思う。数日前までは起きあがることすら出来なかったくせに、と。
 カカシが本格的に目覚めたのが一昨日。起き上がっても支障がなくなったのが昨日。多分昨日。そうしてもう大丈夫だからと押し倒された。
 それからはもう何がなにやらイルカには分からない。五年ぶりだったのに、カカシはそりゃあもう容赦なかった。病み上がりでこれなら本格的に元気になったらどうなるんだろうか、とイルカはちょっとぞっとする。あんな調子で毎日やられたらこっちの身が持たない。
 ごろりと体の向きを変えれば身体のあちこちが軋むように痛んでイルカは息を詰めた。お腹が空いていたけれど、それよりもまだ眠い。
 ぽかぽかと心地よい日差しに目を閉じればあっという間に眠気が襲ってくる。カカシが戻ってくる気配もないし、まぁいいか。そうしてイルカはまたうとうとと眠りの中へと落ちていった。



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