in the life


雨宿り





その日、カカシの機嫌はこれ以上ないくらい良かった。
もう、鼻歌なんか歌っちゃうくらいである。
実際シャワーでシャンプーを流しながら鼻歌なんか歌っちゃってたりした。
何てったって鴨がネギ背負って土鍋小脇に抱えてやってきちゃったりしたもんだから、そりゃあ機嫌も良くなると言うモノである。
哀れネギを背負った鴨は今頃激しくなる雨を見ながら溜息をついていたのであった。



家に帰った時から天気が崩れるのは分かっていた。
カカシはどういう訳だか小さい頃から天気を読むのが上手い。
まだ薄明るい空を見上げてカカシは今晩はヒドイ雨になるな、と思った。
程なくして、暗くなりきらない夕方の薄闇の空からほとほとと雨が落ちだしてやっぱり、と思う。
ちょっと見た感じではすぐに止みそうにも見えるがコレはダメだ。
明日も多分、きっとこのままヒドイ雨になる。
そういう感じの空だった。
ふと思う。
コレは、チャンスかもしれない。
偶然を装ってあの人の家に雨宿りと称して押し掛けて、こんなに酷くなるとは思いませんでした、とか何とか言って。
上手くすればあの人の方から泊まって行かれますか、とかそういう言葉を引き出せるかもしれない。
そうなればもう泊まって行けと言ったイルカが悪いのだから後は好きにさせて貰おう。
誘ってくれたんでしょ、なんて言ってみたりしてもいいかもしれない。
あの人は、きっと。顔を真っ赤にして怒ったりするだろうけれど、絶対に俺を追い出したりはしないから。
それは、美味しい。
平日のお泊まりなんて、そうそうできるもんじゃないから。
案外身持ちの堅いあの人はいつだって程々なんだから、たまにはこんな日にかこつけてもイイだろう。
そうと決まればこれ以上雨が強くなる前に、そう思って立ち上がろうとした時ものすごくびっくりした。
こんな偶然あるんだろうか、と、ちょっと疑うくらいには。
だって鴨がネギを背負ってやってきたら、誰だって驚くでしょ?

『あの、カカシ先生。ちょっと雨が上がるまででいいんでお邪魔させていただけませんか?』

無防備なあの人は、雨が上がるなんて甘いことを考えているようで
今日ここでオレの家に上がり込んだら、帰れないほど雨足は強くなりますよ。
この人が天気を読むのがまるで下手でこんなにありがたかったことはないかもしれない。
にこやかに、まるでいつもと変わらない笑顔で。

『どうぞ。』

そう言ってみた。
あぁ、イルカ先生、雨は上がりませんよ。
にこにこと、笑ったまま。
イルカもカカシの真意をくみ取れないまま、笑いかけるカカシににっこりと笑った。

今頃窓の外を眺めては後悔の念に苛まれているだろう可愛い恋人を思って、カカシはいそいそと風呂場を後にしたのだった。


fin


流星ウッキィさんからのリク。
リクエストクイズとか昔やってたんだよね…。とか儚く思い出してしまいました。笑。


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