in the life



お休みなさいを言う前に。
眠りに落ちるその前に。
ほんの甘い口付けを。
唇に頬にその額に。

優しい、甘い。
キスを下さい。



kiss




情事のあとの乱れた息を甘く吐き出してイルカは目を閉じている。
浅く緩く呼吸を繰り返す胸、頬を伝う涙のあと。
柔らかい、可愛い、温かい、イルカ。
ずるりとイルカの中から自身を引き抜けばふるりとまつげを震わせて、ゆるゆると目を上げる。
瞬きする目尻からまた、涙。
ほろりと落ちたそれを舌で辿ればまた目を閉じて、投げ出した手を緩くカカシの首に巻き付けてその銀の髪を梳く。
温かい、手の平。優しい感触。
瞼を吸い上げて笑いかける。
自分の顔が、どんなに弛んでいるか分かるけれど。
だってこんなに幸せな事なんか他にあるだろうか。
幸せで幸せであったかくってもうダメだ。
ずぶずぶと幸せに使ってしまう感覚。
イルカがいなくては、息さえ出来ないと、心が訴える。
だから抱きしめて、キスをして。

カカシの頭を緩く抱きしめたままイルカは眠りに落ちようとしていた。
ふんわりと柔らかい、イルカの気配。
抱き寄せてイルカの寝やすいように位置をずらす。
ぼんやりと眠りに引き込まれる前のあやふやな視線をカカシにあわせて、何かを欲しがるような表情を浮かべている。
だからキスを、落とした。
唇に、軽く触れるだけの、キス。
そうして頬に口付けて、額に音を立ててキスをした。
ほんの少し、見逃してしまいそうなくらい小さく、それでも満足そうに笑ってイルカはことりと身体の力を抜いた。

「お休みなさい、イルカ先生。」

腕の中で寝息を立て始めた愛しい人にほんの小さく囁けば、それでも重い瞼を持ち上げて小さく囁き返してくれる。
囁きは、吐息と共に耳元をくすぐって。
おやすみなさい
そう呟いたのが分かる。
その声に、堪えきれない笑みが浮かんでしまう。
可愛い可愛いイルカ。
今度こそ本当に眠りに引き込まれたイルカを抱きしめてカカシもうっとりと目を閉じたのだった。







抱きしめてキスをして、眠るまで側にいて。
そうして目覚めたときに初めて出会う人があなたでなくてはイヤなのです。
だから、ずっと抱きしめていて。
閉じこめて、離さないで。
ずっと、永遠に。


fin


流星さんとFUKIさんに捧げます。
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